人びとが密に住まう島で、女性たちは近所で日々食べ物をやり取りし、おせっかいで親密につきあう一方、その関係は固着しすぎず隣2~3軒の範囲で短期間で組み替わる。近所では誰かについてのゴシップが飛び交うが、関係は極めて険悪にはならない。本発表では、おせっかいで親密だがドライさと風通しのよさも併せ持つこの隣人関係がいかに生まれるのかを、海や路地が生み出すリズムと、そ…
住血吸虫症は熱帯・亜熱帯に広く流行する寄生虫感染症で、約2億人の感染者が推計され、その9割がアフリカ大陸で発生しているとされる。人への感染経路で重要なのが淡水との接触である。住血吸虫症の流行地域では農業を主産業とする国があり、農業に従事することで淡水との接触が避けられず、住血吸虫症罹患リスクが高まる。ここでは、私が調査で関わったマラウイでのビルハルツ住血吸虫…
◆第262回 「職業病としてのビルハルツ住血吸虫症」(三島 伸介) ◆第263回 「小さな島の海と路地のリズム、女たち―モザンビーク島の、切れては繋がる近所づきあい」(松井 梓) ◆第264回 「日常を取り戻すーナイジェリアにおける警察の暴力とトラウマ」(玉井 隆)
マダガスカル共和国では近年、様々な精霊を祀るドゥアニと呼ばれる聖地が、民族・宗教・国境を超えて、多くの巡礼者を集めている。そこでは社殿や施設が立派になり、祭祀対象が図像化され、聖地そのものも増加するなど、信仰の「具象化」が進行している。こうしたドゥアニ信仰の発展には、一神教的な宗教とは異なる独自の発展スタイルがあるように思われる。本発表では憑依を伴う聖地信仰…
東・中央部アフリカに位置するウガンダ共和国。その首都カンパラのはずれにあるN・スラムには移民/難民からなる多くの貧困家庭が住まい、そこで育つ女児たちの多くが初等教育を中退し、家を去るかたちで失踪し、バーガールとして人生の一時期を近隣の歓楽街で過ごす。点と線で成り立つ都市社会の人類学的調査の特有性や窮状について触れながら、カンパラにおけるスラムと歓楽街の密接な…